合格一直線! 〜現役弁理士が明かす合格のネタ帳〜

 ※ 法学書院発行「弁理士受験新報」の連載記事のご案内
 

法学書院発行「弁理士受験新報」の平成21年2月号より、新しい連載記事「合格一直線! 〜現役弁理士が明かす合格のネタ帳〜」を掲載しています。
 この連載は、主人公の東野 広(ひがしの ひろし)が、弁理士という職業に出会い、受験を決意し、合格するまでの物語です。
 そして、物語の進行に合わせて、弁理士試験の合格に必要なテクニック(判例の凝縮法や合格点を取る答案の書き方など)や学習法などを「ネタ帳」として紹介します。
 また、試験とは別に、弁理士に関する情報を「裏話」として掲載しています。
 楽しみながら読んで学習に役立てていただけるように執筆していますので、ご興味のあるかたはぜひご購読ください。

 弁理士受験新報のご購入は、書店、または法学書院のホームページ(下記)にて可能です。 ※ 法学書院のホームページはこちら→〔クリック〕


ひがしの ひろし
主人公: 東 野  広

勉強法について

 弁理士試験は学ぶべきことがたくさんあります。人は、あまりにたくさんのことを一度に理解することはできません。ですから、シンプルな内容から順に掘り下げていく学習が適しています。

弁理士試験で学ぶべき重要法律は、いわゆる四法と呼ばれる特許法、実用新案法、意匠法、商標法です。他にも条約や著作権法、不正競争防止法などもありますが、四法が出題の中心となっています。これらの四法は、特許法が中心となり、実用新案法、意匠法、商標法で特許法を必要に応じて準用しています。ですから、特許法をしっかり学ぶことが最重要になります。

さて、この特許法の体系は、凝縮MAP(下図)と名づけたフレームワーク(枠組み)で非常にシンプルに説明できます。つまり、特許法に規定されている内容は、「創造期」、「形成期」、「活用期」のたった3つに分類できるのです。

 簡単に言うと、特許法は、創作した発明を出願し(創造期)、特許庁の審査を受けて権利取得可能なように調整し(形成期)、権利化後に権利者が独占実施やライセンス許諾などできる(活用期)、という内容が規定されています。

本質的にはたったこれだけなのです。そして、この特許制度を現実に運用していくために、細かい規定が多数設けられているのです。

 また、この凝縮MAPを使ったフレームワークは、論文試験にも威力を発揮します。論文試験の事例問題は、しっかり題意把握をすると、「創造期」、「形成期」、「活用期」のどれかを聞いています。ですから、どの期を聞いている問題か認識することによって、解答すべき範囲を理解することができます。
 例えば、凝縮論文対策講座で提供している論文パターンレジュメは、この期に沿って分類した答案構成のパターンを提供しています。

法体系と凝縮MAP

 凝縮MAPについてもう少し詳しくすると、「創造期」と「形成期」は、「特許出願」によって区切られます。また、「形成期」と「活用期」は、「特許権設定登録」によって区切られます。

 

「創造期」について

創造期では、まず発明とは何かが問題になります。保護対象である発明でなければ、特許法による保護を受けられないからです。
 また、保護を受けるのが誰かも問題となります。これが「特許を受ける権利」と呼ばれるものです。この特許を受ける権利は、複数人で発明した場合に「共有」の問題が生じたり、企業内の従業員が発明した場合に「職務発明」や「予約承継」の問題が生じます。
 また、「新規性」や「進歩性」、「先願」、「29条の2」といった登録要件も重要となります。これらの登録要件を満たさない出願は権利化されませんから、この「創造期」の段階で、事前調査によって同一発明が既に存在しないかなどを確認します。
 それから、出願書類を作成するための「記載要件」も重要になります。法律で定められた記載要件を満たした出願をしなければ、拒絶や出願却下の対象になるからです。
 こういったことに注意するのが「創造期」であり、この注意点をクリアして「特許出願」した後は、「形成期」に移ります。

 

「形成期」について

 形成期では、特許庁の審査手続きと、それに対する応答手続きが重要になります。例えば特許庁から「拒絶理由通知」が届くと、この内容が妥当か確認し、「意見書」で反論したり、「補正書」で権利範囲を小さくしたりします。この他にも、「単一性」要件の違反を解消する「分割出願」や、実用新案や意匠に変更する「変更出願」などもこの形成期に入るといえます。

 このように特許庁に対して手続きをしていくことで、権利内容が定まっていき、特許査定または拒絶査定に至ります。拒絶査定に対しては、拒絶査定不服審判で争うことができ、さらに審決取消訴訟で争うこともできます。この争いも形成期に入ります。
 特許査定に至れば、後は登録料を納付するだけで「特許権」が「設定登録」され、「活用期」に移ります。

 

「活用期」について

 活用期では、特許権侵害に対する理解と、特許権をどのように利用するかが重要になります。このため、特許権の権利範囲、特許権の効力、特許権の効力が制限される場合、ライセンス許諾といった内容を理解することが必要です。

 特許権侵害に対してどのような措置が取れるのか、特許権侵害といわれた場合にどのような対抗措置が取れるのかをしっかり理解する必要があります。また、権利者と侵害者が協力関係を築くためのライセンス契約や権利譲渡なども理解する必要があります。

 こうやって流れを書くと、特許法は非常に簡単に見えるでしょう。実際には細かい条文についてしっかり理解を深めていくことが大切ですが、まずこの全体像を押さえてから学ぶことで、最初から体系的に理解できます。

 凝縮基礎短答講座は、この凝縮MAPを用いて、全体像から細部へ進み、再度全体像での位置づけを確認するといったように講義が進みます。だからこそ、「わかりやすい」と絶賛していただいています。

ワンポイントアドバイス

受験指導をしていると、勉強に煮詰まって方向性を見失っている人が結構おられることに気づきます。
 論文試験は、何らかの情報を得たときに急激に合格に近づくことがあります。
 その論文合格に近づくための情報は、多くの人に共通することもあれば、人によって異なることもあります。
 このコーナーは、頑張っている受験生に少しでも情報を提供し、合格に近づいてもらいたいと思って作成しております。
 論文試験に役立つワンポイントアドバイスを記載しており、順次増やしていきますので、たまにチェックしてみてください。
 そして、役立つと思ったことは是非取り入れてください。 ※2008年4月より、弁理士受験新報にてワンポイントアドバイスを掲載しております。
 このホームページでは、弁理士受験新報に掲載後3ヶ月程度経過してから掲載しています。

【第8回】論文過去問を攻略する!〔2009.8.30 Up〕

弁理士受験新報 No.48 2008年12月 掲載

〔掲載内容〕

もうすぐ来る年末年始という時期

 以前、ワンポイントアドバイスの第1回(4月号掲載)にて、まとまった時間と細切れの時間を分けて、時間をうまく使う方法を掲載いたしました。その際、まとまった時間は、細切れの時間ではできない(効率が悪い)ような勉強に当てるべきであると掲載いたしました。
年末年始は、このまとまった勉強時間を確保するチャンスです。特に社会人受験生にとって、10時間以上の勉強時間を何日も続けて取れるチャンスは、年末年始、ゴールデンウィーク、盆休みくらいしかありません。
集中して勉強時間を確保できる数少ない機会ですから、講義が無いからと休むのではなく、最大限有効に活用してライバルと差をつけましょう。

年末年始の過ごし方

まず、何日もまとまった勉強時間を確保できる期間に行うべき勉強には、次のようなものがあります。
@条文の通読
A短答過去問の集中特訓・研究
B論文過去問の集中特訓・研究
このうち、年末年始の勉強として、最もお勧めなのは、「B論文過去問の集中特訓・研究」をすることです。この時期に過去問を研究しておくことで、年明けの答案練習会で過去問と比較しつつ学習でき、学習効率が上がります。普段なかなか論文過去問を解く時間がない人は、ぜひこの機会に論文過去問を研究し、攻略しましょう。
なお、「@条文の通読」は、ゴールデンウィークにすることをお勧め致します。短答試験直前に行うことで、非常に力がつきます。

論文過去問の研究方法

論文試験の過去問をしっかり解いて研究する事は、非常に重要です。理由は次のとおりです。

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論文過去問研究が重要な理由
@ 合格するという事は、この本試験レベルの問題が解けるという事。
A 傾向と問題レベルが解り、ゴールの位置が解る。
B 良問が多い。
C 解答例を複数入手できる。
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このようにメリットの多い過去問研究ですから、必ず時間を正確に計り、全文書きで解答することをおすすめ致します。
ただし、ただ解いて解答例を見るだけではほとんど意味がありません。
過去問を研究する際に、次の4点に注意すべきです。

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過去問研究の注意点@
凝縮されたコンパクトな模範解答を手に入れる。
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この点が重要なのは、試験時間内に書き切れないような長い解答例だけでは、インプットの学習には役立つものの、アウトプットの学習として不十分だからです。論文試験では、単に知識があるというだけではなく、その知識を時間内にしっかりとまとめて漏れなく説明する能力が問われます。このため、時間内に書ききるアウトプット能力が必要となります。弁理士凝縮塾の論文過去問攻略講座で提供している凝縮模範解答のように、試験時間内に書ける凝縮された解答を参照する事が大切です。

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過去問研究の注意点A
同じ問題の解答例を複数入手し、比較検討する。
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この注意点が大切な理由は、次のとおりです。
(1)予備校によってかなり違う場合があります。
(2)ひとつの予備校に頼りきる危険性を認識できます。
(3)自分で組み合わせて最良の解答を作り出せます。(この作り出す作業そのものが勉強になります)
(4)皆が落としやすい項目を発見できます。

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過去問研究の注意点B
合格者の再現答案を入手し、比較検討する。
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この注意点が大切な理由は、次のとおりです。
(1)実際に合格点に達するために必要なレベルが解ります。
(2)何を書けば合格点に達するのか解ります。
 合格者の再現答案は、弁理士受験新報に掲載されていますし、弁理士凝縮塾のHPから一部ダウンロードすることでも入手できます。

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過去問研究の注意点C
合格レベルの答案を書くため、自分に何が足りないか検討し、それを克服する対策を練る。
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これにより、今後の勉強方針、強化すべき点を明確にできます。
このように過去問を研究することで、答案練習や講義の受講では得られない非常に貴重な知識を得る事ができます。

どんな試験でも、過去問を研究するのが合格の近道で王道です。それなのに、予備校のカリキュラムにまかせっきりで、自分で過去問研究をしない受験生が多いのではないでしょうか。
この過去問研究をすることで、さまようライバルに差をつけ、ゴール目指して一直線に駆け抜ける事ができます。

まだ過去問を解いていない方、解いてもそこまで研究していなかった方、過去問研究をせずに合格はありえないと考え、徹底的に研究して下さい。得るものが必ずあるはずです。
目指すべき論文答案

 上述のようにして論文過去問を研究し、実際に目指すべきものは、合格基準となる60点を確実に取れる答案です。1科目で70点や80点を取るのは困難です。それよりも、55点以下の点数を取らないことが大切です。

 60点を取ることは、必要な大項目をしっかり挙げ、その大項目の内容を必要最小限に書くことで十分に可能です。最近の項目数が多い本試験では、大項目を1つくらい落としても60点が十分に付くこともあります。これは、私自身の受験経験と過去問研究から言えることです。ただし、文章表現が悪いと、書いたつもりで書けてない場合がありますので、そうならないように注意してください。
 そして、55点以下を取らないために必要なことは、迷ったり分からない場合でも間違いを書かないことです。

 このために最も大切なのは、試験会場で考えついた根拠の無いことを答案に書かないことです。その場で考えた根拠の無い答えは、90%間違えていると考えてください。それを1箇所書いてしまうだけで、後がどれだけ良くても不合格になる可能性が高まりますから、非常に危険な行為です。

 それから、分からないところほどさらっとあっさり書くことです。論点が聞かれているのだろうと想像できても、知らない以上は書けませんので、条文レベルでさらっと答えます。

そうすることで、試験管は、一部が物足りなくても、他が出来ているからまあいいかと考えます。これにより、60点を取ることができ、合格の確実性を高めることができます。

 

このように論文過去問を研究し、確実性の高い答案を書けるように訓練して、来年の論文試験合格を勝ち取りましょう!

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【第7回】論文答案を凝縮する!〔2009.8.30 Up〕


弁理士受験新報 No.47 2008年11月 掲載

〔掲載内容〕

模範解答や合格者の再現答案がどのような思考過程を経て出来上がっているのかを解説する講義は少ないように思います。結果物の解答だけを見ても作成法が解らないと再現できませんよね。この点が論文作成能力を養う上で1つの障害になっているように思います。
 このようなことから、今回は、論文答案をどのように作成するかという点について記載致します。

論文の作成方法

 論文答案の作成およびレベルアップは、次の2つの側面からアプローチします。
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(1)答案構成の枠組み
 →必要な大項目をいかにして漏れなく挙げるか
(2)項目内の記載
 →大項目の中身をいかに正確かつコンパクトに記載するか
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この2つのアプローチが非常に大切で、どちらが欠けても十分な合格答案になりません。合格者の答案は、この2点が十分に押さえられています。また、答案練習会の模範解答も、この2つのアプローチから作成されていると言えます(たまに不十分なものも見かけますが)。
 この2点を意識して、漏れが無いか、正確か、コンパクトかといった観点で模範解答等を確認し、自分の思考能力を養うことが大切です。

答案構成の枠組み

 答案構成の枠組みの作成は、答案構成のパターン化が役立ちます。パターンは、創造期(出願段階)、形成期(中間段階)、活用期(権利化後)に分けて、模範答案のタイトルのリストを整理することで作成できます。パターン化は良く言われることですので、今回省略致します。

項目内の記載

答案構成の枠組みに加えて、項目内の記載をうまく書けるかどうかで、自分の知識をしっかりアピールできるかどうかが決まります。
項目内の記載を良くするために、次の3つのフレームワーク(枠組み)が有効です。
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 <@措置系>
  タイトル
  〜すべきである。
  〜だからである。
  〜に留意する(要件当てはめなど)。
 <A論述系>
  タイトル
  ・結論
  ・理由
 <B要件当てはめ>
  ・主体
  ・客体
  ・時期
  ・手続
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 大項目の中身を書く際に、「@措置系」と「A論述系」のうち書きやすいと思える方を選択すると便利です。そして、3つ目の「要件当てはめ」を意識して、必要な要件を漏れなく書いていくようにします。「論述系」であれば、「理由」の中身で「要件当てはめ」を行えば良いので簡単です。「措置系」の場合は、「〜に留意する」の部分に「要件当てはめ」を記載します。

文章のまとめかた

 上述した「答案構成の枠組み」と「項目内の記載」によって答案に書くべきことは定まります。ですが、問題文が長く試験時間の短い現在の論文試験では、さらに、内容を削らずに文章を短くする「凝縮」能力が必要となってきます。このためのポイントは、第2回にも少し書きましたが、次の2点に集約されます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1)要件は必ず全て列挙すること
(2)キーワードと事例問題の記号に絞ること
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 要件は、1つでも漏らしてしまうと、弁理士の判断として失格ですから、漏らさず検討することが非常に大切です。なお、「該当しない」と記載する場合は、該当しない要件だけを記載してその他の要件を省略してもかまいません。
 要件を漏らすことなく凝縮するために、文章から無駄を極限まで省く必要があります。そうして最終的に残るのは、キーワードと事例問題の記号(甲、A、イ、…)になります。他に使うのは、助詞(てにをは)と述語(〜である、〜に留意する、…)と接続詞(従って、ここで、…)くらいです。
 例えば特29条の2でしたら、次のような冗長記載がありがちです。

<冗長版>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
@出願Aは、2006年2月1日に出願され、2007年8月15日に公開されている。Aの出願人および発明者は甲である。出願Bは、2006年4月1日に出願されており、Bの出願人および発明者は乙である。
Aここで、出願Aは、2006年2月1日に出願されているから、2006年4月1日に出願されている出願Bの先願である。
Bそして、出願Aは、Bが出願された後の2007年8月15日に公開されている。
Cまた、Aの発明者および出願人は甲であるから、Bの発明者及び出願人である乙と異なる。
D従って、Aの発明αとBの発明βが実質同一であれば、BはAにより29条の2で拒絶される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これを凝縮すると次のようになります。

<凝縮版>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
@AはBの先願である。
AAはBの出願後に公開されている。
BAの発明者及び出願人甲は、Bの乙と異なる。
C従って、AのαとBのβが実質同一であれば、BはAにより29条の2で拒絶される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 さらに凝縮すると次のようになります。

<超凝縮版>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
@甲が発明し出願したAは、乙のBの先願であり、Bの出願後に公開されている。
A従って、AのαとBのβが実質同一であれば、Bは29条の2で拒絶される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 短くなっているのは一目瞭然ですが、それぞれ何が違うかわかりますか?
まず、冗長版は、@部分が事例の単なる繰り返しで、後に重複し無駄になっています。また、日付けの記載と、「〜は〜であるから〜だ。」という文章表現で、1文が長くなっています。
凝縮版は、「〜は、〜だ。」というシンプルな表現ですので、1文が短く明確です。しかも要件に漏れがありません。このように簡潔明快に書ければ、本試験の時間内に十分に合格点を狙える答案になってきます。
さらに超凝縮版は、AやBといった事例の記号さえも可能な限り繰り返さないようにまとまっています。特に、甲、乙とだけ書くことによって、簡潔に主体の違いを表しています。ここまで圧縮すると、残っている言葉は、事例の記号である「A,B,α,β」、キーワードである「発明(者)、出願(人)、先願、公開(時期)、実質同一、拒絶」、および助詞や述語や接続詞だけになっていることがわかります。
私は採点時に冗長記載を指摘しますが、一般の答案練習会で冗長版の記載をすると、間違ってはいないので○が付くことが多いです。冗長記載の修正は骨が折れますし、そこまで出来る人もしてくれる人も少ないのです。返却答案が合格点でも安心せず、自分自身で厳しく評価し、合格レベルの凝縮記載を身に付けて下さい!

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【第6回】読みやすい答案を書く!〔2009.8.30 Up〕

弁理士受験新報 No.46 2008年10月 掲載

〔掲載内容〕

受験指導をしていると、論文答案を読みやすくするにはどうすれば良いか、字をきれいにするにはどうすれば良いかといった相談を、意外にたくさん受けます。そこで、今回は論文答案を読みやすくする方法を掲載致します。

答案全体の読みやすさ

聞かれたことのある方も多いと思いますが、答案全体を読みやすくするために、次の3点が重要です。

(1) タイトルを付けて字下げをする。
(2) しっかり答案構成して順序良く書く。
(3) 1文を短くする。

 こうすることで答案全体が読みやすくなります。

タイトルも字下げもなく、びっしりと文字が埋め尽くされた答案を見ると、採点官は、読む前にげんなりしてしまいます。その理由は、どこに何が書いてあるのか、ひと目で分からないからです。

また、答案の記載順序がバラバラだと、記載漏れとバツを付けた後に正しい記載が出てきたりして、心証が悪くなります。答案の順序がまずくなって矢印などで文章を挿入する場合がありますが、これがあまりに多いとやはり心証は悪くなってしまいます。そうならないために、しっかり答案構成をして、順序良く書くことが大切です。(とはいっても、うっかり忘れた項目を後で思い出した場合は、矢印などで挿入するしかありません。その場合は仕方なく挿入してください。)
実際、論文本試験で採点された弁理士から、良く出来ている答案は読みやすい、ひどい答案は文章の意味が解らなかったり読みづらいと聞いたことがあります。

 

また、1文を短くすると、内容が明確になり読みやすくなります。通常、日本人だから日本語を普通に書いていると思いがちですが、日本語を正確に書くのは意外に難しいのです。特に、長い文になると、最初と最後で主語が変わりやすく、意味不明な文章になりやすいものです。こういったことを避けるために、1文を短くしましょう。なお、正しい日本語を書くための学習ツールとして、次の本がお勧めです。実務的にも役立ちます。
「日本語の作文技術」(本多勝一 著)朝日文庫

要件の読みやすさ
 

論文試験の答案では、要件を漏らさず書くということが大切です。要件をひとつでも漏らすと正しい判断ができませんので、試験官は、「弁理士試験に合格させて弁理士になるにはまだ早い。合格点は付けられない」と判断する可能性があります。そうすると、要件を漏らさず書くことに加えて、漏らさず書いたことを試験官にしっかり読み取ってもらうことが大切になります。そのために、次の2つの方法があります。

(1) 要件を箇条書きに列挙する。
(2) 要件に「@〜、A〜」と番号を付ける。

 答案用紙のスペースに余裕がある場合は、次のように箇条書きで改行すると良いでしょう。
「@Aは特許権αの技術的範囲に属する。
A甲の販売は業としての実施である。…」
 スペースに余裕が無い場合、要件が多い場合は、次のように改行せずに番号を付けると良いでしょう。
「異なる部分Aは、@本質的部分でなく、A置換可能であり、…」
 こうすることで、要件が認識容易になります。

文章の読みやすさ

 私は、受験時代に自分の答案が読みにくいと感じて、どうすれば読みやすくなるのかを研究したことがあります。そのときに気づいたのが、次の3点です。

(1) 単語を途中で切って改行しない。
  (そのために右に余白を空けて改行)
(2) 修正は単語単位で行う。
  (1文字を書き間違えても単語単位で修正)
(3) 修正後は、1文字分スペースを空ける。

 

こうすることで、答案が随分読みやすくなりました。採点すると良く解るのですが、採点者は、キーワードを単語単位で拾い読みします。そのため、キーワードが途中で切れていると、キーワードを認識しづらいのです。これを防止するために、キーワードとなる単語の途中で改行したり、一字だけの訂正をしたりすることを避けることが有効です。

 具体例では、「異なる部分が本Π質的部分…」と訂正するのではなく、間違えた文字の前も含めて「異なる部分が本Π 本質的部分…」と訂正します。両修正を比べてみると、後者の方が修正後でもキーワードが浮き立って読みやすいと感じるのではないでしょうか。

文字を読みやすくする

 字が下手だという方も結構おられます。私も字が下手な方ですので、気持ちが良く解ります。下手な字を読めるようにする対策としては、次の3点が有効です。

(1) 文字を大きく書く(特に漢字を大きく)。
(2) 特に読みにくい文字だけ練習する。
(3) 練習は正しい書き順の練習本をなぞる。

 文字が下手だとおっしゃる方の多くは、字が小さい傾向にあります。特に画数の多い漢字で字がつぶれていたりします。これを意識的に大きく書くだけで、小さい文字よりぐっと読みやすくなります。
 また、字を大きく書いても読めないと指摘される方もおられるでしょう。その場合、読みづらいと指摘される文字だけを集中的にケアすることが有効です。
 弁理士試験の論文試験で、それまでに一度も答案に書いたことの無い文字を書くことは、ほぼありません。自分の知識にあるものは、答案練習会で1度は書いていることが多いと思います。
 そして、字が下手だといっても、同じ文字は同じように書くはずです。ですから、ある文字が読みづらければ、次に書くときも同じ文字が読みづらいのです。そして、それ以外の文字は、少々下手だと思っても読めないほどではないのです。
 実際、下手な字を書く人の採点をしても、読めない字は決まっています。私は読めない漢字があれば必ず指摘するようにしています。そうすると、1つの答案で、同じ文字を何度も指摘することが多いのです。
 ですから、字が下手だと感じておられる方は、特に読みにくい文字だけを集中的に練習してください。そうすることで、答案の文字全体の読みやすさが格段にあがります。
 このようにして、採点官が読みやすい答案を書き、努力して培った実力を正しく評価してもらいましょう!

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【第5回】1を聞いて10を知る!〔2009.1.4 Up〕

弁理士受験新報 No.44 2008年8月 掲載

〔掲載内容〕

 弁理士試験の最終合格率は7%弱。すっと短期合格する人もいれば、長年合格できない人もいます。受験生の皆さんは、弁理士試験に最終合格するために、何が必要なのか、悩まれる方も多いことと思います。今回は、合格するために何が必要なのか、またそのための勉強法を掲載致します。

合否の差は能力の差?

 長らく勉強してなかなか合格できない人は、合格者は天才なのではないか、天才とまでいかなくても自分とは能力が違うのではないか、自分にはやはり無理なのではないか、そのように感じてしまうかもしれません。
 ですが、そんなことは決してありません。まず、私自身天才でも何でもない普通の人です。そして、私が受験指導して合格された方も、特別能力が高いというわけではなく、みなさんと同じく必死に頑張って勉強した普通の人です。
 中には、一回聞いたら忘れない抜群の記憶力を持つ人など、能力的に優秀な方もおられます。ですが、合格者が皆そのような能力を持っているかといえば、全くそんなことはありません。普通の能力で努力をして合格された方が圧倒的に多いのです。
 これは、多くの合格者、弁理士仲間と話していて感じることですから、まず間違いないでしょう。逆に、抜群の記憶力を持ちながら、論文試験をなかなか突破できないという方もおられるくらいです。

合否の差は努力の差?
 

受験生の中には、合否の差が勉強時間の差や努力の差だと考える人もおられると思います。そして、自分にできる最大限の努力をして、これ以上はできないから合格が無理だと感じられる方もおられるのではないでしょうか。
 ですが、安心してください。努力の差でも無いようです。初学者の中には、努力の足りない方もおられるでしょう。しかし、例えば論文試験の答案練習会である程度の成績が取れるようであれば、決して努力の差とはいえません。今まで聞いてきた感触から、合格者も不合格者もほぼ同じ量の努力をしているケースが多いと言えます。

合格者と不合格者の本当の違い
 

上述したことから、合否の差が努力の差でも能力の差でもないこと、ましてや天才だけが合格するということは決して無いことをご理解いただけたと思います。では、何が合否を分けるのでしょうか。
 合格者と不合格者の違いは、試験に対するアプローチの違いです。アプローチが悪ければ、いくら頑張っても、いくら能力があっても、合格できないのです。前号でも合格へのアプローチを掲載しましたが、このアプローチをしっかり考えることが本当に重要なのです。
 例えばマラソンをするとしましょう。ゴールに向かって走れば、順位の差があっても必ずゴールすることができます。しかし、ゴールがどこかわからず闇雲に走っていれば、いくら走ってもゴールにたどり着かないのです。
 弁理士試験も同じです。ゴール、つまり合否を分けるボーダーラインがどこにあるのかをしっかり見据えて、このボーダーラインを一歩超えるために何をしなければならないかを考える必要があります。そして、そのボーダーラインの一歩先というゴールめがけて走る必要があるのです。闇雲に勉強して、知識を貯えているだけでは、ゴールにたどりつけないのです。

ボーダーラインの一歩先
 

ボーダーラインの一歩先にたどり着くためには、本試験の問題に答えられるようになる必要があります。何を当たり前のことをと思われるかもしれませんね。しかし、ただ勉強しても答えられないのが本試験の問題なのです。ですから、あくまでも本試験で正解を導くための勉強をしなければならないのです。
 このためには、インプット(知識の補充)と、アウトプット(問題を解く)を平行して行う必要があります。インプットだけでは、本試験で正解を導きだせません。インプットよりも、むしろアウトプットに焦点を置いてください。そして、正しくアウトプットできるようにインプットしていく必要があります。

1を聞いて10を知る
 

アウトプットを正しくできるように、1を聞いて10を知る勉強法が役立ちます。どういうことかというと、共通化と差別化をしっかり行い、共通化したフレームワーク(枠組み)をベース知識としてしっかり持つことです。例えば、特、実、意、商に共通する事柄を1つ覚えれば、どの法域で聞かれても答えられます。これが、1を聞いて10を知るということになるのです。そして、異なる部分(例外部分)を差別化し、対比関係で覚えるようにします。こうすることで、試験問題を見て「特許ではこうだったけど意匠ではどうだっけ?」といったことを防止でき、体系だった知識を得ることができます。
 なお、特、実、意、商に共通する法体系のフレームワークは、だいたい次のようになります。

 

特、実、意、商を、それぞれこのフレームワークに当て嵌めれば、同一点、差異点が明確になってきます。同一点を共通化し、差異点を対比して、効率よく学習しましょう。
 また、論文においては、答案構成のパターンを共通化することが有効です。例えば、次の2つの答案構成パターンでは、イコールとしている部分が共通部分です。「意見書」と「答弁書」、名称は違いますが、反論を書くという点で実体的な内容面で共通しているのです。また、「補正」と「訂正請求」も、明細書等の内容を変更する措置である点で変わりありません。このように、意味内容を理解して、共通化していくことで、理解が深まり、暗記も楽になります。


 

このように、共通化と対比を行い、論理的思考を駆使して、本試験のアウトプット力の向上と、理解レベルの向上という一石二鳥の勉強により、効率よく合格を目指しましょう!

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【第4回】合格へのアプローチ〔2008.10.25 Up〕

弁理士受験新報 No.43 2008年7月 掲載

〔掲載内容〕

合格へのアプローチ

弁理士試験の受験界で出回っている情報は、大学受験の受験界で出回っている情報に比べると随分レベルが落ちます。
大学受験では、志望校を決め、予備校や塾へ通って勉強すれば、努力によって合格できるようになっています。受験生は、その大学に受かるために何を勉強しなければならないかといった事を考えなくても、予備校や塾の提供する学習内容を頑張って勉強するだけで良いのです。提供されたものだけを信じて勉強すれば合格できる、至れり尽くせりの状況と言うことができます。
ところが、弁理士試験ではそうはいきません。ひとつの受験機関だけで合格する人より、複数の受験機関を利用して合格する人の方が多いのが現状です。また、論文の答案練習で常に成績上位であっても、何度も論文試験で失敗する人が結構たくさんおられます。このような状況では、どうやって合格を掴み取るか、自分で考えなければならないのです。 今回は、合格に向けて、どのようなアプローチをすべきなのか、私の考えを掲載致します。

情報収集の重要性
 

情報の乏しい弁理士受験界では、自分で情報を手に入れる必要があります。合格するためには、重要部分とそうでない部分、テキストは何がいい、予備校はどこがいい、判例をどう集めるか、論文の答案スタイルはどうすべきか等、様々な情報が必要です。持っている情報が勝敗を決めるといっても過言ではありません。  では、その情報を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。私の場合、「ギブ・ギブ・ギブ」の精神で勉強仲間に必要と思われる情報をたくさん提供することで、そのお礼として貴重な情報を手に入れることができました。
 情報を得たければ、惜しみなく情報を提供することが大切だと思います。そうすることで、たくさんの情報が集まってきますので、その中から自分に合いそうなもの、合格に役立つと思えるものを取捨選択していきます。
 ただ、一点注意する事があります。情報を人に提供する際、特定の少人数に限定することに注意してください。濃いつながりを持った少人数で情報を分け与えることで、みんなで合格することが可能になります。こうすることでゼロサムの世界(全て足したらゼロになる)ではなく、協力し合う気持ちよい世界で合格を目指せます。つまり、「あいつが受かれば俺が落ちる」ではなく、「俺もあいつも一緒に受かる」です。
 これを、ブログなどで不特定多数に配信したりすると、情報を見る人が多いわけですから、一気にゼロサムの世界に突入する恐れがあります。つまり、「あいつらが合格すれば、俺が落ちる」という世界です。
気持ちよく勉強するためにも、少人数で情報を共有しましょう。そして、一緒に合格を目指しましょう。

勉強内容を絞り込む

 弁理士試験の出題範囲は、非常に膨大です。これをすべて理解し暗記しようとすると、膨大な時間を要します。特に、暗記すべき量が増えれば、それだけ全てを暗記し続けることが困難になってきます。したがって、闇雲に何でも勉強するのではなく、勉強内容を絞り込む作業が重要になってきます。
 ここで、合格だけを考えると、その年の本試験で出題される内容そのものに絞り込むことが効率良いのですが、それは不可能なことです。
 このため、合格に重要な情報を検討し、絞り込むことになります。この合格のために重要な情報を、私は次のように考えています。

@本試験の合格に必要最小限の内容
A本試験に合格するために不要な内容

@本試験の合格に必要最小限の内容

合格に必要最小限の内容とは、具体的には、合格のボーダーラインのレベルの人たちが皆出来る事項になります。その人たちが出来ないことは、自分が出来なくても差がつかないからです。また、論文対策では、このように絞り込んだ事項から重要なキーワードにさらに絞り込み、コンパクトにしておく必要があります。これが合格に必要最小限の内容となります。
 このようにして勉強内容を必要最小限にすると、次のように様々なメリットがあります。

(@)量が少ないから暗記が楽になる。
(A)勉強するために要する時間を短縮できる。
(B)何度も何度も復習して知識を確実に定着することが容易になる。
(C)本試験直前に短時間で一気に見直すことができる。
(D)論文の答案をコンパクトにまとめることができる。

ただし、この必要最小限の情報を入手することは、一般的には困難です。必要か否かを聞かれた大抵の講師は、「出たじゃないですか」と言われるリスクを避けるため、不要部分をカットする指導をやりにくいからです。そのため、受験生が勉強する内容はどんどん増えてしまいます。
この必要最小限の情報を得る方法として、過去問と多量の事例問題を分析し、出題された部分をピックアップし、全く出題されなかった部分をカットする方法があります。しかし、これには膨大な作業が必要になります。弁理士凝縮塾の凝縮基礎短答講座や凝縮論文対策講座のように、重要点が明記されていたり、あらかじめ絞り込まれたテキストを入手するのが効率的です。

A本試験に合格するために不要な内容

勉強しなくて良い部分を知ることができれば、勉強の効率が上がって良いですよね。合格レベルの受験生が知らない部分は、知らなくても合格できるのですから、この情報は重要です。これは、例えば大手予備校全ての答案練習を受けることで、大体把握することができます。どの予備校でも出題されなかった論点は、誰もできない可能性が高いので、カットできます。
また、合格者から聞くことでもある程度把握できます。「そんなところ勉強しても出ないよ」とか「そんなの誰も知らないよ」と言われる部分をカットすることができます。

テクニック面を磨く

短答の肢を間違えないためにどうすればよいか、自分の答案に何が足らないのか、どのように考えて論文答案を構成するのかといったことを把握し、テクニック面の対策を磨くことは非常に重要です。
短答のテクニック面は、関連事項の整理法を合格者から聞いたり、間違いを分析して対策を練ることで、磨いていくことができます。
論文のテクニック面は、自分の答案を合格者に見せ、また思考過程を聞いてもらい、まずい点を指摘してもらうことが有効です。また、オーソドックスな問題をパターン化し、項目漏れを防ぐことも有効です。周りに合格者がいない場合、受験仲間と検討し合うと良いでしょう。
貴重な時間を使って勉強するのですから、最大限効率よく勉強して合格を掴みましょう!

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【第3回】論文本試験に挑む!〔2008.10.25 Up〕


弁理士受験新報 No.42 2008年6月 掲載

〔掲載内容〕

論文試験の心構え
 

論文試験は、これまでの勉強の成果が試されるときであり、非常に重要です。これまでの勉強の質と量も大切ですが、それ以上に、勉強の成果を本番で十分に出し切れるか否かが重要なのです。今回は、論文試験に挑むにあたっての心構えを中心に掲載します。

本番でいい格好をしない(必ず安全路線)
 

論文試験は、少しでもよい点を取りたいと思うものです。ですが、そこに罠があります。
いくらいい格好をして点数を上げようとしても、実力以上の点数を得ることはできません。頑張って無理に書くと、かえってマイナス評価になります。この典型は、知らない論点が出たときに、その場で考えた自説を書いて撃沈するケースです。後で合格者の再現答案を見ると、そんな論点は一切書いておらず、基本中の基本だけが書いてあるといったことがよくあります。
論文試験は、受けた者の20%程度が合格できる試験です。ですから、ここで上位6.8%(最終合格率)に入ろうとするような答案は必要ないのです。特に、最近の多論点型の試験では、少々記載の薄い項目があったところで、全体が良ければ十分に合格点がつきます。
ですから、知らない部分が聞かれたような場合、無理して自説を書いたり正確か否か怪しい知識を書いたりせずに、絶対に間違いではない基本を書くようにしてください。これが実力を十分に出し切ることにつながり、合格を引き寄せるのです。

見切り発車しない(答案構成は万全に)
 

本試験は極度に緊張します。私の場合、問題を読んでも緊張で頭に入らず、何度も読み直して特許2問の答案構成に計40分もかかった経験があります。
 このようなときに、答案構成に時間をかけると書く時間が無くなると考えて、見切り発車する人がいます。ですが、それは間違いです。見切り発車した時点で不合格の確率が非常に高まると考えてください。
 答案構成がきちんとできなければ、合格はありえません。例えば、事例問題を読み間違えるということは、弁理士が案件を間違えて理解するということです。答案が整理できてないということは、クライアントにきちんと説明できない弁理士だということです。必要項目を落とすということは、弁理士が案件に対する判断を誤ったり不適切な手続きをしてしまうということです。このようなことでは、弁理士試験に合格できないのは当然です。
ですから、答案構成は、万全を期し、確信を持ってから書き始めるようにしてください。
時間は平等です。自分に時間がない時は、ライバルも時間がないものです。隣の人が自分より早く書き出した場合も、焦る必要はありません。そのような人は問題文の読み落としや項目落ちをしている可能性が高いので、皆さんは落ち着いて答案構成してください。そして、残った時間で満まんべんなく書けばいいのです。残り時間が少なければ、浅くコンパクトに項目漏れの無いように書けば、それで合格答案になります。他の人も浅くしか書けないか、見切り発車して撃沈しているかのどちらかだからです。

時期、手続きを忘れずに

 受験生の方は、つい難しい論点に目がゆき、注意がそちらに集中してしまう傾向が多いように思います。論文試験の答案を採点していると、論点はばっちり書かれているのに、時期的要件(特に商標の除斥期間)や手続的要件が書かれていない答案をよく見かけます。
確かに論点は重要です。ですが、論点だけが重要なのではありません。論点も重要ですし、それ以外も重要なのです。
時期的要件や手続的要件は、すぐに理解できる簡単なところだからと軽視してよいでしょうか。答えは「否」です。むしろ、時期的要件や手続的要件といった、一見些細に思えることの方が大切なのです。
 例えば、特許出願に対して進歩性違反の拒絶理由が来た場合、「単なる寄せ集めではないから、当業者が容易に想到することができたことの論理付けができない」といった反論をすることは、弁理士として非常に重要な仕事ですし、論文試験においても重要です。
ですが、それ以上に、意見書提出期間内に意見書や補正書をきちんと提出することの方が大切です。いくら素晴らしい見解を意見書に書いても、期限を過ぎてから提出しては何の意味もありません。もし実務でこんなことをしてしまっては、弁理士として失格なのです。
 こういった一見些細に思える事をきちんと確認して確実な仕事をするのが弁理士ですから、弁理士試験でもこういった点が評価されます。
 本試験は、どうしても緊張しますし、他の受験生が強敵に感じます。そうすると、つい論点をしっかり書かなければと力が入ってしまいます。それでも、答案構成が終わった段階、答案を書き終わった段階で、論点だけでなく時期的要件や手続的要件などの単純な項目をきちんと記載しているかチェックしてください。  論点だけに目を奪われず、些細に思える事項もきちんと答案に書くようにしましょう。

論文試験が終わったら再現答案の作成を

 論文本試験が終了した後、なるべく早い段階で再現答案を作成しましょう。合否がわからない状況で再現答案を書くことは、非常に辛い作業になるかもしれません。ですが、再現答案は、自分が合格した場合、残念ながら合格しなかった場合、いずれの場合にも非常に役立ちます。
 仮に、残念ながら合格できなかった場合には、自分の答案に何が足りなかったのか、冷静に分析することができます。そして、来年に向けた勉強をどのように進めるべきか、検討する材料にできます。近くに合格者がいるのでしたら、どこが良くなかったのか聞くことをお勧め致します。合格者は、受験生自身が全く意識していない部分に問題点が潜んでいると気づくことがあります。また、時間が経ってから再現答案を見れば、本試験の直後には気づかなかった自分の悪い点に気づくこともあるでしょう。
このように敗因分析をきちんと行い、その対策を踏まえた勉強計画を練ることこそが、合格への最短経路を導き出すことになるのです。
 一方、合格した場合には、再現答案を後輩たちの指導に役立てることができます。あなたの成功体験は、後に続く受験生にとって、非常に役立つ情報になります。是非成功体験を友人や後輩に分け与えてあげてください。
 先月発行された弁理士受験新報No.41で特集「合格者が書いた再現答案と答案構成プロセス」を掲載された伊佐治 創氏も、私のすすめで再現答案を作成され、後輩の役に立てること、自分自身の記念となることを非常に喜んでおられます。
 このように、再現答案は、合否いずれの場合も役立ちますので、ぜひ作成してみて下さい。
 なお、私の合格年度(H16)の再現答案は、下記ホームページで無料配布している小冊子「論文試験のエッセンス」に掲載してあります。

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【第2回】論文試験へラストスパート!〔2008.10.25 Up〕


弁理士受験新報 No.41 2008年5月 掲載

〔掲載内容〕

一日も早く論文へスタートを切ろう

 短答試験が終わった直後から、論文試験に向けての競争が始まります。短答試験当日の夜くらいは休んでもかまいませんが、次の日から論文試験に向けて全力で勉強する必要があります。短答試験後は、おそらく、自己採点や、ボーダーラインが気になる方が多いのではないでしょうか。気持ちはよくわかりますが、そういったものは意識の外に追い出して、論文試験に向かって走りましょう。
 短答試験日から短答試験発表日までの期間は、短答試験日から論文試験日までの期間の約5分の2にもなります。この貴重な時間を大切に使いましょう。

模試をフル活用

 では、短答試験直後にまず何をすると良いのでしょうか。私は、論文の問題を本試験の制限時間で全文書きにより解答することをお勧め致します。短答試験直後は、想像以上に自分の論文試験の実力が落ちているものです。まず、その実力の落ち具合を実感することが、後のモチベーションを高めるために有効です。答案構成だけでは実力の落ち具合を実感しづらいので、絶対に全文書きしてください。
このために、模試をフル活用します。これで一刻も早く勘を取り戻し、記憶喚起を促してください。また、模試では、特実は2問答案構成してから書き始めるなどのシミュレーションをし、本試験での解答スタイルや時間配分も決めましょう。
なお、模試が始まる前は、過去問を解くなど、本試験レベルの問題を解くのが良いでしょう。

論文試験に役立つ効率化ポイント

 最近の論文試験の突破には、事例把握力、答案構成力、表現力の3つが重要だと思います。知識力も当然必要なのですが、この知識は、表現力を意識して高めることが重要です。このためにもっとも役立つのが、凝縮論文対策講座でも常に指導している、要件を整理し、キーワードに凝縮して理解・暗記するという手法です。
 キーワードに凝縮することで、文章で覚える場合に比べて、暗記に必要な時間が短くなり、暗記そのものが楽になります。
 また、表現をコンパクトかつ明確にして文章を短くすることで、本試験での時間切れを防止することができます。
 このために役立つポイントは、次のとおりです。

答案凝縮のポイント
・キーワード以外の言葉はなるべく使わない。
・問題文の記号を利用して単語を省略する。
・日付けは書かず、先か後かのみを書く。
・重複記載をなくす。
・一文を短くする。

 

具体的には、次のように記載します。下線部分がキーワード、太字部分がポイントになります。たったこれだけの記載で、進歩性について非常に深い理解を表現することができます。

〔凝縮した記載例〕
 

αは、出願前公知文献X,Yに記載されたAとBの単なる寄せ集めであるから、当業者に容易に想到できたことの論理付けができ、進歩性違反で拒絶される(特29条2項、49条)。

1行目からコンパクトに
 

よく頭でっかち尻つぼみの答案を書く人がいます。特に本試験でそうなるという人もいるでしょう。これは、少しでも良い点を取ろうとして、最初は長い記載となり、時間がなくなって最後は短い記載となるためです。
 ですが、これではバランスが悪く、各項目の配点を十分に取ることが難しいので、合格点を取るのが困難になります。
 答案を書く時は、1行目こそコンパクトに書くと意識してください。全体的にコンパクトに書きすぎて時間が余れば、それは最高に良いことです。余った時間で答案を見直し、完璧にしてください。甲と乙を間違えて書くというような、致命的なミスを発見することがあります。私も、本試験の意匠問題でAとBを間違えて記載し、見直しで気づいて修正できたので無事合格できた経験があります。
 ぜひ、最初からコンパクトに書くように心がけてください。

根拠条文は正確に

 根拠条文は非常に重要です。たまに根拠条文が全然書かれていない答案がありますが、弁理士試験の答案としては不十分です。また、根拠条文の正確性に欠ける答案もいけません。
 法令、審査基準、および判例に基づいて正確に判断し、クライアントのために最善をつくすのが弁理士の仕事です。そして、法令、審査基準、および判例の中で一番上位に位置するのが法律の条文になります。
 したがって、弁理士の判断には、その根底に条文の裏づけが必要になります。
 論文試験でも同じです。拒絶理由を書くとき、侵害か否かの検討を書くとき、何を書くときでも全て条文の裏づけが必要です。 自分が、条文に基づいて判断していることを、採点者に伝える必要があります。
 いくら自分が条文に基づいて判断していても、答案に根拠条文を書かなければ、採点者に、条文の裏づけがないと判断されてしまいます。ですから、必ず根拠条文を記載するようにして下さい。
 それから、根拠条文の記載が不正確な人がいます。例えば、商標の禁止権の侵害を書くときに、根拠条文を「37条」と書く人がいます。これは、商標が解ってないと採点者に判断されても仕方のない行為です。禁止権は、37条1号です。37条2号〜8号は、間接侵害の規定です。これを「37条」とまとめて書くようでは、商標が解ってないと言われても仕方ないですよね。ですので、禁止権の根拠条文は「37条1号」と正確に書く必要があります。ほかにも、差止の根拠条文は特100条1項(特100条2項は廃棄・除却請求権)、新規性は特29条1項(特29条2項は進歩性)など、明確に区別してください。

合否を左右する一覧表の作成

 論文試験では、ちょっとしたミスが合否を左右することがあります。このようなミスを防止するために、次の一覧表を作成することをお勧め致します。
@書けない漢字を一覧表にする。
 直前模試等で思い出せない漢字があった場合、メモ用紙にでも抜き出して一覧表にしましょう。本試験の当日にそのメモ用紙を見るだけで、漢字が書けないということを防止できます。
Aよくやる間違い、落としやすい項目を一覧表にする。

 特実、意匠、商標に分けて、よくやる間違いや落としやすい項目の一覧表を作っておきましょう。そして、論文試験の直前休憩時間に見直しましょう。これだけで項目落ちなどを防止できますから、非常に重要です。ぜひ、合格点を確実に取る一手段として活用してください。
 直前期の大切な時間を一日一日大切に使って、ぜひとも合格を勝ち取ってください。

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【第1回】短答試験に向けて〔2008.8.4 Up〕

弁理士受験新報 No.40 2008年4月 掲載

〔掲載内容〕

はじめに
 

私の受験時代の経験と、これまでの講師経験から、受験生は予備校の講義で語られない部分に悩みを持っていると気づきました。このワンポイントアドバイスでは、ちょっとしたコツや勉強方法など、講義ではなかなか語られず、受験生が悩みやすいポイントについて、私からのアドバイスを記載します。皆さんの悩みが少しでも解消し、合格へ向けての弾みになれば幸いです。

1.模試でシミュレーションしよう
 

大手受験予備校では、短答試験の模試が開催されています。ほとんどの方が受けられているのではないでしょうか。その模試、ただ受けるだけでは非常にもったいないと思います。せっかくの模試ですから、シミュレーションにも活用してください。具体的には、次の項目について作戦を立て、シュミレーションすると良いでしょう。

@問題を解く順番をどうするか
 ・得意科目から解く、1問目から解く等
A時間配分をどうするか
 ・1問にかける時間
 ・各科目にかける時間
 ・トイレ休憩のタイミング
 ・見直しに残す時間
B問題の見切り基準をどうするか
 ・難しいから後回しにするなど
C試験開始前の緊張をどうやってほぐすか

 

このような作戦をいくつか立て、模試で実際に試して、最も良いと感じた作戦を本試験で使いましょう。
なお、模試の活用方法として、正答率の高い問題(50%以上の問題)を間違えたら、必ず復習して解けるようにしておいてください。皆ができる問題をできるようにすることが非常に重要です。

2.なぜ間違えたのか分析しよう

 短答試験の問題を解いて間違えたときに、なぜ間違えたのかを分析することは、非常に重要です。間違いの原因によって、その問題に対する対応策が異なってくるからです。
まず、知識が足りなくて間違えたのか、ケアレスミスで間違えたのかをきちんと把握する必要があります。そして、知識が足りない場合、次に正答できるように知識を補充していく必要があります。単にその知識がなく、その知識さえ補充すれば正答できるのであれば、そこだけ復習すれば足ります。しかし、何かほかの知識と混同して間違えた場合、条文・基礎レジュメに戻って、関連知識を整理して正確に理解し覚える必要があります。
このように、なぜ間違えたのか、この間違いを繰り返さないようにどのような勉強をすればよいのか、常にレビューしてください。そうすることで、着実に実力が上がります。

3.ケアレスミスをなくそう

 短答試験は、ボーダーラインの1点差の間に非常に多くの人がひしめき合っています。したがって、1点が非常に貴重です。また、一気に60問を解く短答試験は、ケアレスミスを出しやすい試験です。ボーダーに1点足りない場合に、その原因がケアレスミスと気づいたときは、悔やんでも悔やみきれないことでしょう。


したがって、上述した分析により間違いの原因がケアレスミスと判明した場合、「次から気をつけよう」なんて安易に考えず、「このケアレスミスを無くすにはどうすればいいか」を考えてください。具体的には、次のケアレスミス防止法を行う良いでしょう。

  

【ケアレスミス防止法】
  @間違った原因を分析する
  A原因がケアレスミスなら、傾向を分析する
   (特に、よくやるミスをしっかり把握)。
  Bミス内容・防止方法の一覧表を作成する。
  C本試験の開始直前に一覧表を再確認する。

この一覧表を試験開始前に見るだけで、1点、人によっては数点上がる可能性が十分あるのですから、やらない手はないでしょう。是非試してみてください。

4.時間をうまく使おう

 過ぎ去った時間は、二度と戻ってきません。また、頭脳を使うとき、途中で中断されると再度最初から考える必要が生じ、非効率的になります。このようなことから、ビジネス界の多くの成功者が、時間管理の重要性を語っています。
 では、弁理士試験勉強では、時間管理をどのように行えば良いのでしょうか。ここでは、まとまった時間の使い方と、こま切れの時間の使い方について説明します。なお、かっこ内の時間は、最低これくらい必要という時間の目安です。人によって異なってくると思われます。
(1)まとまった時間の使い方
まとまった時間は、どのように使うことも可能です。できるだけたくさん確保して、しっかり使いましょう。大切なのは、まとまった時間が必要なことを把握しておくことです。具体的には次のとおりです。

  

【まとまった時間】
   →新しい勉強に使う
   @新しいことを学ぶ(数時間〜)
   A関連事項を整理する(4〜5時間〜)
    cf) 補正関連の整理,審判〜審決取消訴訟,と訂正審判・訂正請求の流れの整理
   C条文を一気に通読する(1日〜)
    …etc.

 

このような勉強は、こま切れの時間では効率よくありません。積極的にまとまった時間を確保しましょう。

(2)細切れの時間の使い方
 通勤電車などの移動時間、昼休みといったように、1時間にも満たないこま切れの時間がいくつかあると思います。このようなこま切れの時間は、復習に使いましょう。

【こま切れの時間】
   →復習に使う
   @暗記すべきことを暗記する(5分〜)
   A暗記できているか確認する(5分〜)
    Bすでに聞いた講義テープをもう一度聴く(5分〜)

 復習は、電車内のようにテキスト1つを開くのがやっとという状況でも、ほとんど問題なく行えます。新しい勉強であれば、ほかの参考書を見る必要が出てきますが、復習はその必要がほとんどないからです。
 また、歩いている時間は、講義テープを再度聴いて復習しましょう。良い講義は、一度聴くよりも二度、三度と聞くべきです。一度目に聞き過ごしたりピンと来なかったところも、二度目、三度目にはきちんと理解でき、知識が深まります。そのため、通学講座を受けて録音するか(もちろん録音禁止されていない場合ですよ)、通信講座を受講するのもいいでしょう。
 限られた時間を有効に使って、是非合格を勝ち取ってください。

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【No.12】 短答の問題集に書き込むべし!〔2008.3.10 Up〕

短答試験の勉強で、過去問を解く、問題集を解くといったことをすると思います。
何度も復習すると、だんだん正答できる問題が増え、間違う問題の方が減ってきますね。
そうなってくると、復習するときに、問題集のページをめくり、解答集のページをめくりと、ページめくりばかりに時間をとられて効率が悪くなってきます。
こういうときに便利なのが、赤や緑の文字が消えるシートです。
間違った問題に、たとえばピンクやオレンジのペンで理由と答えを簡潔に書き込みましょう。
そして、復習するときは、書き込んだ解答を赤いシートで隠して解き、その後に赤いシートをずらして解答を確認しましょう。
こうすることで、すぐに解答を確認でき、ページめくりに取られる時間が激減します。
さらに、自分で簡潔に書き込む解答は、わからない点に絞って記載することで、解答集に書かれた文章よりも短時間で確認できるようになります。
こういう準備をしておくと、試験前日などに苦手な問題だけをさっと確認できて便利です。
また、解答集を持ち歩かなくていいので、資料が軽くなります。
さらに言えば、試験前日に覚え切れていない部分だけを切り取って持ち運べば、非常にコンパクトになり試験会場までの電車などで最終確認できます。
たくさん資料を持っても当日は確認しきれませんから、大事なところを凝縮した資料を持ってスマートに試験に挑みましょう。(なお、持ってる資料が少ないと不安に思う方は、必要かもと思える資料を全部持って行き、安心感を得る方が大切です。)
短答の問題集を解いていて非効率と感じる方は、ぜひ試してみてください。

【No.11】 短答試験が苦手な人へ〔2008.2.3 Up〕

論文も短答も復習が非常に大切です。
一度解いた問題を、次に解いたときにできるようにする、 この繰り返しで合格に必要な実力がついてきます。
今回は、短答試験が苦手な人のため、短答試験対策の復習についてのアドバイスを記載します。

短答試験の過去問を解くことは、短答試験に合格するために必須と言えます。
では、どのように勉強していくと効率が良いのでしょうか。
答えは、出来るまで繰り返し復習するという方法です。
復習方法はたくさんありますが、私が合格した年にとった方法を紹介します。

短答復習方法
 @ 間違った問題の翌日復習(正解できなければ翌日へ持ち越し)
 A 1度でも間違った問題の1週間後復習(正解できなければまた翌日へ持ち越し)

この復習でのポイントは、理由も含めて正しく答えられるようになるまで復習を繰り返すことです。
翌日に復習しても、すでに忘れている問題が結構あるものです。
忘れていながらもおぼろげな記憶が残っているうちに復習して完璧にしていくことで、効率よく覚えていくことができます。

このように勉強していくと、はじめは復習ばかりで新しい 問題に進めないんじゃないかと不安に思うかもしれません。
また、実際にこの勉強を始めると、復習に取られる時間が多いので、 結構つらく感じると思います。
ですが、心配しなくても大丈夫です。
続けているうちに、復習量と新しい勉強量とのバランスが 取れるようになります。
そして、確実に実力がついていきます。
復習ばかりで新しい問題に進めない日も出てくるでしょうが、その翌日には新しい問題に進めますから、あせらずじっくり勉強してください。

こういう復習をしないで、解いた問題を解きっぱなしにすると、勉強は先へ進んでいきますが全く知識が定着しません。
その結果、学んだはずの知識がほとんど残っていないことになります。
過去問を5年分ほど全部解いて勉強し、もう一度最初から解こうと思ったときに、 全く初めての問題かのように見えてショックを受けるのが、 復習不足の典型です。

「急がば回れ」ということわざがありますよね。
早く新しい勉強に進みたくても、あせらずにしっかり復習し、 着実に知識を身につけていってください。

【No.10】 過去問研究は必須!〔2007.12.7 Up〕

論文試験の過去問をしっかり解いて研究する事は、非常に重要です。
理由は次のとおりです。

@ 合格するという事は、この本試験レベルの問題が解けるという事。
A 傾向と問題レベルがわかり、ゴールの位置がわかる。
B 良問が多い。
C 解答例を複数入手できる。

このようにメリットの多い過去問研究ですが、ただ解いて解答例を見るだけではほとんど意味がありません。
過去問を研究する際に、次の3点に注意すべきです。

 @ 同じ問題の解答例を複数入手し、比較検討する。
 ∵かなり違う場合があります。
  ひとつの予備校に頼りきる危険性を認識できます。
  自分で組み合わせて最良の解答を作り出せます。(この作り出す作業そのものが勉強になります)
  皆が落としやすい項目を発見できます。

 A 合格者の再現答案を入手し、比較検討する。
 ∵実際に合格点に達するために必要なレベルがわかります。
  何を書けば合格点に達するのかわかります。

 B 合格レベルの答案を書くために、自分に何が足りないか検討し、それを克服する対策を練る。
 

∵今後の勉強方針、強化すべき点を明確にできます。

 

このように過去問を研究することで、答案練習や講義の受講では得られない非常に貴重な知識を得る事ができます。
 どんな試験でも、過去問を研究するのが合格の近道で王道です。それなのに、予備校のカリキュラムにまかせっきりで、自分で過去問研究をしない受験生が多いのではないでしょうか。
 この過去問研究をすることで、さまようライバルに差をつけ、ゴール目指して一直線に駆け抜ける事ができます。

 

まだ過去問を解いていない方、解いてもそこまで研究していなかった方、過去問研究をせずに合格はありえないと考え、徹底的に研究して下さい。得るものが必ずあるはずです。

【No.9】 些細な事が超重要!〔2007.8.19 Up〕

 弁理士試験の勉強をしていると、簡単な内容と難しい内容があると感じることと思います。
それでは、論文試験で重要な内容って何でしょうか。
論文試験というくらいだから、いわゆる論点と言われる難しい内容が重要だと考えるのが普通だと思います。
確かに論点は重要です。ですが、論点だけが重要なのではありません。論点重要ですし、それ以外も重要なのです。
 論文試験を採点していると、論点はばっちり書かれているのに時期的要件や商標の除斥期間が書かれていない答案をよく見かけます。
時期的要件や除斥期間は、すぐに理解できる簡単なところだからと軽視してよいでしょうか。
答えは「否」です。 むしろ、時期的要件や除斥期間といった、一見些細に思えることの方が重要です。
 例えば特許出願に対して進歩性違反の拒絶理由が来た場合、「単なる寄せ集めではないから、当業者が容易に想到することができたことの論理付けができない」といった反論をすることは、弁理士として非常に重要な仕事ですし、論文試験においても重要です。
ですが、それ以上に、引用文献の発行日が出願時点より前か後かを確認することが重要です。
発行日が出願後であれば、検討するまでもないのですから、この時期的要件を書くことは非常に重要なのです。
 こういった一見些細に見える事をきちんと確認して確実な仕事をするのが弁理士ですから、弁理士試験でもこういった点が評価されます。
 論点に重きを置いて勉強している人は、ぜひ時期的要件などの単純な項目をきちんと記載しているかチェックしてください。
これをきちんとやらないと、ワンポイントアドバイス〔No.6〕の実力者Aさんと同じ道をたどる可能性があります。


 論点だけに目を奪われず、些細に思える事項もきちんと答案に書くようにしましょう。

【No.8】 受験戦争は情報戦!〔2007.7.14 Up〕

弁理士試験に合格するために最も必要なものは何でしょうか。
私は、情報を得ることが、本試験突破に最も重要なことだと考えています。
情報は次の順で重要と考えています。

@本試験で出題される内容そのもの
A本試験に合格するために不要な内容
B本試験に合格するために必要な最小限の内容
C本試験に合格するためのテクニック
Dその他

 まず、@は絶対に入手できませんよね。
これを求めていろいろな出題予想が立てられます。
でも出題予想は外れることも多いので、役立つ確率は少ないです。

 次にAは、どうでしょうか。
勉強しなくて良い部分を知ることができれば、勉強の効率が上がって良いですよね。
合格レベルの受験生が知らない部分は、知らなくても合格できるのですから、この情報は重要です。
これは、例えば大手予備校全ての答案練習を受けることで大体把握することができますし、合格者から聞くことでもある程度把握できま す。
「そんなとこ勉強しても出ないよ」とか「そんなの誰も知らないよ」と言われる部分です。

 また、Bはどうでしょうか。
これも、必要最小限の部分を確実に答えられるように勉強することで、合格答案を書ける可能性が大幅にアップできますから重要な情報ですね。
この情報を入手することは難しいです。
「これも勉強した方がいいですか?」と聞かれると、大抵の講師は、出る可能性が少ないと思っても出たときのリスクを軽減するために、「勉強するに越したことはないですね」と答えることになります。
教える側は、「出たじゃないですか」と言われるリスクを避けるため、不要部分をカットする指導をやりにくいものです。 それによって、受験生が勉強することはどんどん増えてしまいます。
このBの情報を入手するためには、過去問と多量の事例問題を分析して出てきた部分をピックアップし、全く出てこなかった部分をカットするという膨大な作業が必要になります。

 それから、Cも重要ですね。
合格するために何が必要なのか自分の答案に何が足らないのか、そういったことを把握することは非常に重要です。
この情報も、得ることが難しい情報です。
合格答案がどのようなものかという情報も少ないですし、自分では足りない部分を気づきにくいことがあります。
このCの情報は、自分の答案を合格者に見せてまずい点を指摘してもらうことで得ることができます。
とはいっても周りになかなか合格者がいないでしょうから、受験仲間と検討し合うと良いでしょう。

 さて、このように弁理士試験において情報は重要ですが、その情報を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。
私が取った方法は、「ギブ・ギブ・ギブ」です。「ギブ・アンド・テイク」ではありませんよ。「ギブ・ギブ・ギブ」です。
私は、周りの受験仲間に、自分が良いと思った情報、欲しいと言われた情報を何でも提供しました。
そうすると、情報をもらった仲間は感謝してくれて、向こうから積極的に何かしらの情報を返してくれます
大抵の場合、私から提供する情報が多く、返ってくる情報は非常に少なかったのですが、その数少ない情報の中に非常に役立つ情報が入っていたりしました。
 情報を得たければ、惜しみなく情報を提供することが大切だと思います。
自分の知り合いの受験者数は、全体の受験者数から見れば数が知れていますから、ライバルとして敵視するより、仲間と考えて一緒に合格するようにベストを尽くしましょう。
提供しても情報が全く返ってこないこともありますが、まあ、それはそれでよしとして、決してうらんだりしないようにしましょう。
そうして周りと良い関係をつくりながら、弁理士試験を一緒に突破することが良いと思います。
そういう友人と一緒に合格すれば、同期合格の親友として非常に頼もしく気心知れた最高の仲間になります。
情報を得て合格が近づく上に、気心知れた仲間が増えるのですから言うことなしですよ。

 それから、上述したA、B、Cの情報をまとめたのが「凝縮論文対策講座」です。
私が受験時代にとことん集めた情報を整理して、「A不要な部分」をざっくりカットし、「B必要最小限」にコンパクトにまとめた「キーワード凝縮レジュメ」は、受講生、および合格者から好評を得ています。
また、「C合格に必要なテクニック」は、講義中に随時、説明していますし、「プレミアムコース」のマンツーマン指導にて個別に問題点を指摘し、合格答案の形に持っていけるように思考過程も踏まえて指導しています。特に電話講評は、スタンダードコースから私の勧めでプレミアムコースにコース変更した受講生から「価格差以上の価値を享受しました」と言っていただけるなど、大変な好評価を得ています。
このような「凝縮論文対策講座」により、A、B、Cの情報を効率よく取得するのも一つの手です。
そして、得た情報を友人に提供してあげましょう。友人と情報を分け合うことで、新たに気づく点なども出てくると思います。
(なお、私的利用の範囲を超えた複製は違法ですので、その点はご注意ください。)

みなさん、受験戦争は情報戦です。有効な情報を上手く集めて、合格をつかみ取りましょう

【No.7】 再現答案を作るべし!〔2007.7.9 Up〕

 論文本試験が終了した後、なるべく早い段階で再現答案を作成しましょう。
 合否がわからない状況で再現答案を書くことは、非常に辛い作業になるかもしれません。
 ですが、再現答案は、自分が合格した場合、残念ながら合格しなかった場合、いずれの場合にも非常に役立ちます。
 仮に残念ながら合格できなかった場合には、自分の答案に何が足りなかったのか、冷静に分析することができます。 そして、来年に向けた勉強をどのように進めるべきか、検討する材料にすることができます。 近くに合格者がいるのでしたら、どこが良くなかったのか聞くことをお勧め致します。 再現答案を提出して当塾の「論文再現答案添削講座」を受講するのも良いでしょう。 答案を提出してもらうことによって、受験生個人の問題点を明確に把握して指導することができます。 受験生が全く意識していない部分に問題点が潜んでいることもあります。
このように敗因分析をきちんと行い、その対策を踏まえた勉強計画を練ることこそが、合格への最短経路を導き出すことになるのです。
 合格した場合には、再現答案を後輩たちの指導に役立てることができます。 あなたの成功体験は、後に続く受験生にとって、非常に役立つ情報になります。 是非成功体験を友人や後輩に分け与えてあげてください。
 このように、再現答案は、合否いずれの場合も役立ちますので、作成されることを強 くお勧め致します。

【No.6】 大切なのは「実力」よりも「合格力」!〔2007.6.28 Up〕

弁理士試験の受験界では、よく「実力」という言葉が使われます。
「あなたは実力がある」、「実力がまだ足りない」といったように。
また、「初級」、「中級」、「上級」といった、実力の区分けもよくされます。

さて、ここで問題なのが、「実力の高さ」と「合格の近さ」が正比例するかどうかです。
答えは、残念ながらNOです。

 「実力がある」という言葉は、一般的に、知識が充分にある人、論点を良く知っている人に対して使われます。
たしかに、実力のある人の方が、実力のない人より有利です。
しかし、論文試験は、難しい論点をばっちり書いたからといって、合格するとは限りません。
よく言われることですが、「当たり前のことを当たり前に書く」必要があります。
例えば、いきなり均等侵害を書くのではなく、文言侵害に該当しないという原則論を書いてから、均等侵害という論点を書くといった感じです。
ほかにも、侵害か否かを論じるときに、技術的範囲に属するかどうかだけを一生懸命書いて、 業としての実施かどうかに一言も触れないなんてことをしないということです。
このように、基本的事項をきちんと全部書くことが、本試験で求められます。

これを裏付ける話として、こんな実話があります。

・・・・・・・・・・・・・
 ある実力者A氏がいました。
非常に勉強熱心なA氏は、論点をよく勉強しており豊かな知識を持っていました。
また、A氏は、某受験予備校の答案練習会(約900名が受験)で総合成績50位以内に入りました。
そして、その年の本試験では完璧な答案を作成し、圧倒的な自信を持って発表の日を迎えました。
しかし、結果は不合格でした。
特に、絶対的な自信があった意匠法の判定はB(前年度は○)だったとのこと。
この一年間で散々勉強した結果が○からBへの転落。A氏は非常に大きなショックを受けました。
 一方で、答案練習会では一度も名前が乗ったことがないB氏が、その年、合格していました。
A氏は、その原因を探るため、B氏にお願いして、その人の再現答案を見せてもらいました。
すると、その答案はただただ、基本的な事項が淡々と書いている答案でした。
 自分が答案用紙4枚を全て埋め尽くした結果のBと、基本的事項を淡々と書いた答案での合格。
その時、A氏は、自分の感覚と試験委員の感覚とにズレがあることを悟りました。
そして、これまでの誰もが知らない論点を知ろうとする勉強法を止めて、 誰もが知っている基本的事項、論点を如何にわかりやすく、答案に表現するかという勉強法を採用しました。
その結果、その翌年に最終合格を果たすことができました。
・・・・・・・・・・・・・

この話からも、「実力(知識量)があること」「論文に合格すること」イコールではないことがわかります。
本試験では、難しい論点というよりは、基本的事項が漏れなく書けている答案が望まれているのです。
以上より、単に実力を高めるのではなく、「本試験で求められている答案を書く力」=「合格力」をつけることが必要となります。

ちなみに、基本的事項を漏れなく書くということは、意外と難しいです。
そして、細かい項目漏れは、自分で気づかないことが多いです。
プレミアムコースの電話講評等では丁寧に指摘しているため、受講生のみなさんは、序々にそういった漏れがなくなってきます。
一言聞いただけではなかなか身につかないのが人間ですので、 みなさんも細心の注意を払ってしっかり身に付けるようにしてください。
そして、最終合格をつかみ取りましょう。私もできるかぎりのサポートをしていきます。

【No.5】 根拠条文は正確に!〔2007.6.15 Up〕

 根拠条文非常に重要です。
 たまに根拠条文が全然書かれていない答案がありますが、弁理士試験の答案としては不十分です。
 また、根拠条文の正確性に欠ける答案もいけません。

 法令、審査基準、および判例に基づいて正確に判断し、クライアントのために最善をつくすのが弁理士の仕事です。
 そして、法令、審査基準、および判例の中で一番上位に位置するのが法律の条文になります。
 したがって、弁理士の判断には、その根底に条文の裏づけが必要になります。

 

論文試験でも同じです。
 拒絶理由を書くとき、侵害か否かの検討を書くとき、何を書くときでも全て条文の裏づけが必要です。 条文に基づいて判断していることを、根拠条文を書くという行為で採点者に伝える必要があります。
 いくら自分が条文に基づいて判断していても、答案に根拠条文を書かなければ、採点者に、条文の裏づけがないと判断されてしまいます。ですから、必ず根拠条文を記載するようにして下さい。

 

それから、根拠条文の記載が不正確な人がいます。
 例えば、商標の禁止権の侵害を書くときに、根拠条文を「37条」と書く人がいます。これは、商標が解ってないと採点者に判断されても仕方のない行為です。禁止権は、37条1号です。37条2号〜8号は、間接侵害の規定です。これを「37条」とまとめて書くようでは、商標が解ってないと言われても仕方ないですよね。ですので、禁止権の根拠条文は「37条1号」と正確に書く必要があります。ほかにも、差止の根拠条文は特100条1項(特100条2項は廃棄・除却請求権)、新規性は特29条1項(特29条2項は進歩性)など、明確に区別しましょう。

 このように、根拠条文を書くこと、しかも正確に書くことは、非常に重要です。
 根拠条文は、必ず正確に記載してください。

【No.4】 苦手な漢字は一覧表にすべし!〔2007.6.3 Up〕

 漢字を正しく書くことは意外と重要です。ひらがなで書かれたり間違った漢字で書かれると、それだけで理解不足に見えてしまいます。
 答案練習で思い出せない漢字があった場合、メモ用紙にでも抜き出して一覧表にしましょう。 本試験の当日にそのメモ用紙を見るだけで、漢字が書けないということを防止できます。

【No.3】 論文試験の採点官に甘えてはいけない!〔2007.5.29 Up〕

 弁理士は、出願人の出願手続きを代理するプロの実務家です。
 そして、弁理士試験は、そのプロの実務家を生み出すための試験です。
 従って、弁理士試験に合格するということは、プロの実務家として働く能力を持っているということになります(実際のところ試験に合格しただけでは実務はできませんが、国家資格試験である以上、本来はそうあるべきものです)。
 このように考えると、論文試験の解答もプロの解答であることが求められます。

 

それでは、プロの解答とはどのような解答でしょうか。
 まず、必要な項目が全て挙がっていることが必要です。挙がっていない項目は、知らない項目とみなされ、それだけでプロ失格となります。知らない項目があればクライアントに多大な不利益を与えるのですから、あたりまえと言えばあたりまえですね。
 それから、項目の内容に、必要な要件が漏れなく記載されていることが必要になります。要件を全て検討して判断するのがプロですから、要件が1つでも欠ければプロ失格となります。これも、プロが「できる」というから依頼したのに、実は出来なかったなんてことになれば、クライアントに多大な不利益を与えますから、あたりまえと言えますね。
 そして、措置や結論を書いた場合、適切な理由(あるいは効果)を説明するのがプロです。理由や効果を知らずに措置を取るプロなんていませんし、そのような人はプロとは言えません。
 また、法律要件に対して事例問題を適切に当てはめて処理するのがプロです。ですので、事例問題で一般論しか書けない人は、実務の事例を処理できない人と判断されてしまいます。

 

このように、
  @必要な項目を全て挙げ
  A要件を漏れなく記載し
  B理由および効果を適切に記載し
  C事例を法律要件にきちんと当てはめた
答案が、プロの答案=合格答案となるのです。

 たまに、加点方式だから間違ってもとりあえず書いた方が得だとか、途中まで書けていれば最後まで解っていると良い方向に解釈してもらえるとか、都合良く考える人がいます。ですが、そのような甘い考えは改めましょう。
 自分の答案が、プロの答案として合格点が取れるか、言い換えれば本試験の採点官が弁理士であろうが弁護士であろうが学者であろうが、合格点をつけざるを得ない答案になっているかどうか考えることが必要です。自分の答案をこのように厳しい目で見ることで、甘い部分が解ってくると思います。

 なお、上述した@〜Cのポイントをきちんと押さえた答案を作成することは、適切な指導を受けないとなかなか難しいものです。
 凝縮論文対策講座では、必要な項目を全て挙げられるようになるためのテキストとして、答案構成パターンレジュメを使用します。
 また、要件を漏れなく記載し、理由および効果を適切に記載できるようになるためのテキストとして、キーワード凝縮レジュメを使用します。
 さらに、事例の当てはめの練習を、答案練習だけなく、講義中に講義ノートを用いて説明します。
 これらのレジュメを用いて学習することで、事例問題への対応能力を効率よく身に付けることができると確信しています

 その上、プレミアムハーフコース、およびプレミアムフルコースでは、厳しい視点で答案を採点し、講評しています。ミスや曖昧な記載があると、手厳しい点数をつけます。そして、合格答案にするために必要な部分、足りない部分を細かく指導します。
 甘い採点では運が良くないと合格できませんので、確実に合格を勝ち取るために皆さんも厳しく考えて勉強することをお勧めします。

【No.2】 筆記具は高い万年筆を使うべし!〔2007.5.26 Up〕

 良い万年筆は、それを使うだけで筆記速度が上がります。
 私は、百貨店でいろいろ試し書きした結果、モンブランの万年筆を購入しました。
 はじめは半信半疑でしたが、実際に使ってみると、1ページ15分かかっていたのが10分で書けるようになりました。合格後、その万年筆を何人かに貸しましたが、皆書く速度が上がったと喜んで使っています。
 ただし、万年筆ならば何でも良いわけではありません。良いものであることが必要です。
 後から知ったことですが、一般的に万年筆は最初使いづらく、使えば使うほどすべりが良くなって書きやすくなります。ただし、書きやすくなるまでには相当量書かなければならず、一予備校の答案練習を全回書いたくらいでは足りません。
 しかし、モンブランは、工場出荷前にかなりの量を機械的に書くことで、販売時点からすべりが良くなっています。そのせいで、私が新品を比較した結果モンブランが最も書きやすいと感じたようです。
 また、万年筆は調整でガラリと書きやすさが変わるそうです。職人さんに調整してもらえれば、大抵の万年筆は非常に書きやすくなるようです。
 筆記具を変えるだけで本試験の時間を買えると考えれば、少々値が張る万年筆も良いと思います。
 ちなみにモンブランは、私が購入したときで5万円、今はもっと高くなっていると思います。
 数万円の万年筆は、どれも新品での書きごこちが悪かったので、すぐ使いたいなら5万円以上のものをお勧めします。
 なお、万年筆は人に貸してはいけないと言われています。個人の癖がつくからです。私は万年筆を大事にしていたのですが、頑張っている受験生につい貸してしまいました。

【No.1】 答案練習は、指定時間の10分前にペンを置くべし!〔2007.5.25 Up〕

〔本試験での効果〕
 論文試験の本試験は、極度の緊張状態になる方が多いはずです。私もそうでした。そのように緊張すると、普段の力がなかなか出せず、問題文を読む時間や答案構成の時間が普段より長くなりがちです。
 ですから、これを見越して答案練習の段階で10分短く解答する訓練を積んでください。
 そうすれば、本試験で10分の余裕ができ、緊張で普段より遅くなっても十分対応できます。
 それに、時間に余裕を持たせることで、最後に答案を見直すことができます。甲と乙を書き間違えているといった致命的なイージーミスを発見し、直すことができます。

〔答案練習での効果〕
 余った10分の間に、答案をコピーしましょう。
 1週間や2週間も経過してから自分の答案を見ても忘れています。答案練習を行った直後に模範解答を見て自分で分析することが非常に役立ちます。
 答案は、すぐに提出せず、必ずコピーを手元に残しましょう。
 自分でできる復習や反省はその場で自分で全てすませてしまい、後で採点講評が届いたら自分の気づかなかった点だけをチェックすることが有効です。